
明治、大正、昭和——三つの時代を駆け抜けた、波瀾と哀歓に満ちた大河ロマン。物語は、一通の古い手紙とアンティークのオークションから静かに始まる。どこか既視感のある幕開けに油断していると、気づけば深く物語に呑み込まれている。
明治維新の混乱の中、両親を失い没落した姉妹。売られる寸前、奇跡のように救われた彼女たちの運命は、異国行きの船で大きく舵を切る。姫路藩の家老の娘・三佐緒の世話係として旅立った姉・あやねは、突然「おひいさま」ミサオとして振る舞うよう命じられる。
厳しい礼儀作法、容赦ない矯正。逃げ出した夜、彼女は運命の青年・光次郎と出会う。
与えられたのは運命か、あるいは背負わされた宿命か。すり替えられた人生の中、真の幸せとは何かを問いながら、少女は暗闇の中の光を求めて懸命に生きてゆく。モデルとなった人物の存在もまた、読後に静かな余韻を残す。
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