ぼくとネモ号と彼女たち 角田光代

行き先は風の気まぐれに委ね、誰を乗せるかは運の采配に任せる。青春に理由など不要だ。目的はただ、ハンドルを握ること。それだけ。
親を欺き、手に入れた白のシビックに「ネモ号」と名を付け、兄の大切なコレクションを勝手に売って旅の資金とする。未熟な蛮勇を寄せ集め、ぼくはただ道へ出たかった。
同乗者は、高校の頃から言葉の端がいつも頼りない春香。偶然隣り合っただけの、名も知らぬトモコ。そして、ヒッチハイクをしていた二十九歳の女。
行き先も、終着もない。地図より先に心が動いた。ただ、どこまでも走る。
まるで映像に語らせることを前提としたような筆致で、小説としての読み応えは薄いかもしれない。それでも、疾走する青春の残響が、どこか胸を打つ。

Amazon.co.jp: ぼくとネモ号と彼女たち (河出文庫) 電子書籍: 角田光代: Kindleストア
Amazon.co.jp: ぼくとネモ号と彼女たち (河出文庫) 電子書籍: 角田光代: Kindleストア
タイトルとURLをコピーしました