太陽がイッパイいっぱい 三羽省吾 (著)

小説

愉快で痛快、爽快な青春小説。ストーリーは単純ながら勢いがあり、荒削りながらも何かを予感させる魅力にあふれている。気取らず等身大の筆致が心地よく、読後には「とりあえず頑張ってみるか」と思わせる力を持つ。主人公は三流私大の四回生イズミ。彼女のために始めた日雇い労働で、仕事帰りのビールのうまさに目覚め、やがて解体現場でリアルな日々に生きるようになる。大学では「おもんない」が口癖だった彼が、現場で何かを掴みかける様子が、関西弁全開の語り口で描かれている。大阪が舞台なので方言に好みは分かれるかもしれないが、テンポの良さで引き込まれる。アラン・ドロン主演映画や文庫本「太陽がいっぱい」も劇中に登場し、文学と現実が交錯するユニークな構成も見どころの一つ。余談ながら登場する料理に妙なリアリティがあり、ちくわぶ恐怖症になりかねない読書体験

Amazon.co.jp: 太陽がイッパイいっぱい (文春文庫) 電子書籍: 三羽 省吾: Kindleストア
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