いつもの道、ちがう角 松尾由美

小説
Amazon.co.jp: いつもの道、ちがう角 (光文社文庫) 電子書籍: 松尾 由美: Kindleストア
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平凡な日常を送る女性が、ふとしたきっかけで「いつもと違う道」を選んだことから、不思議な世界や人々と出会い、人生の選択や可能性について考え直していく物語。静かな感動が広がる一冊である。

現実なのか?夢想なのか?勘違いなのか? さらりと読めるが、何と無く切れ味に欠ける。深く考えると、出口が見えない。全7編から成り、うち6編は女性が主人公。どの物語も現実と幻想の境界が曖昧で、ふとした瞬間に日常がずれる感覚を味わわせてくれる。「いつもの道、ちがう角」では見慣れた風景が別世界に変わり、「琥珀のなかの虫」では執着と好奇心が奇妙に交錯する。さらりと読めるが、深く考えると答えの見えにくい余韻を残す点が魅力でもあり、物足りなさでもある。作品間に統一感はなく、雑多な印象を受けるものの、それが逆に現実の多様さを映しているとも言える。ブラックジョークや曖昧さを楽しめる読者には向くが、明確な結末や整合性を求める読者には不向きである。

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