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島原・天草一揆の渦中、圧政に苦しむ民衆が信仰と誇りを胸に立ち上がる。若き絵師が一揆軍に加わり、命を懸けて理不尽な世に抗う姿を描く。
埋もれた歴史を鮮やかに掘り起こす歴史ミステリである。作者の巧みな筆致によって、多くの人名や地名が登場しつつも、硬くなりすぎない表現が功を奏している。しかし、時代小説が苦手な読者にはやや読みづらさを感じるかもしれない。物語は、慶長七年の秋、常陸北限の小さな村で起きた一連の悲劇を通じて、自然と共に生きた昔の人々の暮らしと心情を描き出す。権力交代によって翻弄される末端の大衆の苦悩が重厚に表現されており、歴史の陰に埋もれた真実を知る興奮と共に、人の営みの儚さを静かに教えてくれる。歴史ファンならずとも一読を薦めたい力作である。https://amzn.to/4mXquB2