御一新、慶応から明治へ──江戸は東京となり、時代は激変する。そんな転換期を庶民の目線で明るく描いた、朗らかな時代小説。歴史小説ながら内容も語彙も平易で、苦手な人でもすんなり読める一冊。元武士の今岡龍之介は日本橋で口入れ屋の手伝いを、妻のお駒は柳橋の料亭で仲居を務める。夫婦そろって内職の団扇作りに精を出し、混沌とした明治初期を懸命に生きていく。文明開化の象徴、牛鍋に運命を託し、行動を起こす姿は小気味よく爽やか。信頼という、暮らしの根幹をなす絆が夫婦の間に育まれていく様は、他人同士が共に生きる意味を静かに問いかける。激動の時代も現代も、人が頼れるのは結局人の心。
殺伐とした世を離れ、人の営みの本質を見つめ直す静かな時間を持つのも一興かと
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