水滸伝と日本人 高島俊男

小説

水滸伝の歴史を学術的視点から紐解く一冊。江戸から明治以降まで、日本での受容と展開を丁寧に追った構成で、比較文学の要素も色濃い。著者の語り口は平易ながら内容は高度で、一般向けというよりは興味のある読者に強く響く内容だ。
第一部では江戸時代の水滸伝受容を紹介。川柳や庶民文化を交えつつ、翻訳の変遷や翻案の過程を明快に解説。貴重な資料や当時の版本の写真も多数掲載され、視覚的にも楽しめる。ただし「翻案」に関する説明はやや冗長な印象も。
第二部では明治以降の文学者たちの関わりに焦点を当て、芥川や幸田露伴、森鷗外らの思想や解釈を通して、水滸伝の広がりと変容を浮かび上がらせる。巻末の年表は、時代背景の理解にも大いに役立つ。
中国古典、とくに水滸伝や三国志を愛する読者にはたまらない資料性を持つ良書。著者が構想しているという語彙辞典の完成にも大きな期待を寄せたい。


いやぁ これ某ブックおふの買取で一番高かった文庫なんだよねぇ 事前に値段調べない自分が。。。

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