本書は三編からなる、心温まるほのぼのミステリーだ。このジャンルにおいて、かつてないほど優しい読後感に包まれ、心からお勧めできる一冊である。
高校生の翠は、なくした時計を探して森をさまよううち、誠実で心優しい青年、護と出会う。森の木々と対話し、美しい森を管理する護に惹かれていく翠。護には、翠の何気ない日常の会話から物事の本質を見抜く力があった。ただ話を聞くだけで、絡まった糸を解きほぐすような彼の不思議な力により、穏やかな謎解きが始まる。
スリルもサスペンスも不要なのかもしれない――そう思わせてくれる作品だ。人が人らしく平和に暮らせること、穏やかな空気の中で自然と人が調和できることを、静かに諭してくれる。こんなにも優しい物語を生み出せる作者の才能には感嘆するばかり
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