シンセミア

小説

まさに「神町クロニクル」 著者の地元・山形県神町を舞台に、次々と災いが降りかかる長編小説だ。謎が謎を呼ぶ展開にページをめくる手が止まらない。物語は「パンの田宮」創業者・田宮仁の歴史から始まり、青年団出身のビデオ撮影サークルの暴走、そして2000年夏の事件をきっかけに、事態は加速する。登場人物たちの心理描写や山形弁のリアルな会話も見どころだ。ラストは古典的ながら鮮やかなドンデン返しで、読後には「えぇ!そんなに○×△のぉ!」と驚かされる。巻末の年表はネタバレを含むため、他作品を読む予定なら先に目を通さないのが無難。自分で年表を作るのも一興だ。同じ神町を舞台にした「グランド・フィナーレ」「ニッポニアニッポン」も必読。

Amazon.co.jp: シンセミア(上) (講談社文庫) 電子書籍: 阿部和重: Kindleストア
Amazon.co.jp: シンセミア(上) (講談社文庫) 電子書籍: 阿部和重: Kindleストア
シンセミア(上)
神町。どこにでもあるようなこの片田舎の町は、戦後日本の縮図でもあった。米軍の占領政策の一端を担ったパン屋とヤクザ、田宮家と麻生家は神町で絶大な勢力となり、息子の代になっても両家の固い結びつきは続いていた--あの事件が起きた炎熱の夏までは。壮...
タイトルとURLをコピーしました