移民政策を軸に、戦後日本の棄民政策を背景とした復讐劇。サンパウロ丸で南米アマゾンへ渡った衛藤と家族の数奇な運命を描く。前半は重苦しい展開ながらも、中盤から主人公たちの動きにテンポが出て一気に引き込まれる。構成の巧みさが光り、最後まで読ませる力を持つ。ただ、復讐劇としての緊張感や激情にはやや乏しく、大藪作品のような苛烈さを期待すると肩透かしを食うかもしれない。読後感は、爽快には届かぬも余韻が残る。

ワイルド・ソウル(上下)合本版(新潮文庫)
大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞、史上初、三冠に輝く傑作。国と外務省に騙されて、アマゾンに棄てられた日本人移民たち――。その地に着いた時から、地獄が始まった――。1961年、日本政府の募集でブラジルに渡った衛藤。だが入植地...
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