Amazon.co.jp : 狼の帝国 ジャン・クリストフ・グランジェ
猟奇殺人事件を追う刑事が、調査の中で巨大な秘密結社と狼にまつわる古代伝承に迫る。やがて事件はヨーロッパ全土を巻き込む陰謀へと発展し、刑事自身の過去とも深く交差していく。狂気と暴力が渦巻くダークサスペンス
テロ、政治、移民、麻薬と社会問題を山盛りにし、読者を容赦なく引き込む勢いがある。アンナの記憶障害を発端に、物語は内務省や脳神経科医らを巻き込んで、予想もつかない陰謀の渦に突き進む。脳のメカニズムや感情の扱いにも踏み込んでおり、知られざる人間の内面を覗くような感覚も味わえる。ただし、あまりに風呂敷を広げすぎた感があり、最後はやや強引に畳んだ印象も否めない。描写は強烈で、読者を選ぶだろうが、重厚な読み応えは確かにある。万人向けとは言えないが、心して臨めば深く楽しめる作品である。