『 いちえふ 福島第一原子力発電所労働記 』 竜田一人(タツタ カズト) 全3巻 講談社 2013年 – 2015年 NHK クローズアップ現代「いま福島を描くこと 〜漫画家たちの模索〜」2014年放送で著者は取材に応じている
あらすじに ネタバレあります!
「いちえふ」=「1F」=「福島第一原子力発電所の通称(作業員及び周辺住民による)」
自称売れない漫画家 ペンネームも仮名 只 実際の福島第一作業員 雑誌掲載時のキャッチコピーとして「フクシマの真実を暴く漫画ではない」とある X(旧Twitter)にご本人らしきアカウントは有るが公式かどうかの確認は出来ません
2015年 『 このマンガがすごい! 』
オトコ編 | オンナ編 | |
聲の形 | 1位 | ちーちゃんはちょっと足りない |
魔法使いの嫁 | 2位 | 東京タラレバ娘 |
子供はわかってあげない | 3位 | ベルサイユのばら |
いちえふ 福島第一原子力発電所労働記 | 4位 | 私がモテてどうすんだ |
あれよ星屑 | 5位 | 月刊少女野崎くん |
五色の舟 | 6位 | 高台家の人々 |
ギガントマキア | 7位 | かくかくしかじか |
シャーリー | 8位 | たそがれたかこ |
僕だけがいない街 | 9位 | ドミトリーともきんす |
健康で文化的な最低限度の生活 | 10位 | クジラの子らは砂上に歌う |

聲の形 僕だけがいない街 等 秀作ぞろいに感じる年度だが まぁ おいおい って感じです
この賞自体の選考者の年齢が高いので こういう作品も高ランクに成る傾向はあります ご自分でご注意しながら漫画を選ぶ指標とし活用して下さい
(あらすじ)
東日本大震災後の福島第一原子力発電所で作業員として働いた作者・竜田一人の体験を基にしたルポルタージュ作品。震災と原発事故後、メディアを通じて語られる現場の混乱や危険性とは異なる、実際の作業現場の実情を淡々と描く。
竜田は募集要項や面接の過程を経て下請け会社を通じ現場へ赴き、放射線防護服の着用、線量計管理、除染作業や瓦礫撤去、汚染水処理設備の設置など多岐にわたる業務を経験する。
作業環境は線量や作業時間の制限が厳しく、危険と隣り合わせでありつつも、現場の作業員同士の連帯感や日常のやり取りが淡々と描かれる。一般の報道では過剰に恐怖が強調されがちな中、竜田は過酷ながらも冷静で秩序だった現場の実態を記録し、過剰な先入観を払拭する。
一方で、高放射線エリアでの緊張感や短時間作業の限界、健康リスクを負う労働者の現状を赤裸々に示し、復興の陰にある人々の姿を伝える。
竜田は自身の被ばく線量や作業条件を細かく記録しながら、誤解と偏見の中で働く現場の実態を漫画として世に伝えた。
(ゆるっと感想)
まず「原発作業員=命知らずの特攻隊」という世間のイメージが、いかに過剰なデフォルメかが笑えるほどわかる。
竜田一人の視点は、ジャーナリズムの「危険!」という見出しを軽くいなしつつ、現場での線量計のピッという音や、汗だくでスーツを脱ぎ捨てる労働者たちの姿を淡々と描く。過酷さは確かにあるが、そこにはギラギラした英雄譚も、絶望に沈む地獄絵図もなく、ただ「仕事としての非日常」が広がる。放射線管理区域での数分単位の作業や、賃金体系のリアルな話も包み隠さず描かれ、逆にその淡々さが怖さと滑稽さを同時に際立たせる。
竜田自身も「線量が貯まったら次の現場へ」というルールの中、作業員として普通に飯を食い、休み、働き続ける。危険と日常が同居する現場を、悲壮でも美化でもなく「こうだった」と記録する筆致が、逆説的に現実の重さを感じさせる。
読後には、報道や噂で作られた虚像よりも、汗と埃の匂いのする現場の方がずっと生々しいと痛感する。

(おまけ)
当時、私も現場で働くお誘いを受けた時に、実際に求人に書かれている現場作業員の賃金が報道等の賃金より安価だったので調査した事がある。まぁ 結果は案の定だったのだがw 仲介会社の賃金搾取により現場作業員の賃金問題が発生する等、問題点のさり気ない提示も必要であろう。
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