えんため

小説

黎明に叛くもの 宇月原清明

驚天動地の異形戦国譚。戦国の闇に蠢く二人の梟雄、斎藤道三と松永久秀が、ペルシア伝来の暗殺術を武器に天下を狙う。物乞いのような姿で登場した庄五郎と久七郎が、美濃と阿波の国盗りを誓い合い、やがて魔王・信長の前に立ちはだかる。久秀と光秀の丁々発止...
小説

接近 古処誠二

悲惨な戦争を描きながらも平易で読みやすく、それでいて深い余韻を残す一冊。昭和二十年、沖縄戦の最中を生きる十一歳の少年・安次嶺弥一の視点から、戦争の理不尽さと人々の葛藤が描かれる。純粋に日本の勝利を信じる弥一と、現実に苦しむ大人たちとの対比が...
小説

冷血 トルーマン・カポーティ

ノンフィクション・ノベルの金字塔『冷血』。1959年、カンザス州の田舎町で起きた一家四人惨殺事件を題材に、犯人ペリーとディックの心理に深く切り込む描写は、読む者の心を掴んで離さない。数十ドルのために命を奪い、やがて絞首刑となる彼らの姿を通し...
小説

魂よ眠れ ジョージ・P・ペレケーノス

ワシントンDCを舞台に、元警官で黒人の私立探偵デレク・ストレンジが活躍するシリーズ第3弾。死刑判決が確実視される元ギャングのボス、グランヴィル・オリヴァーの命を救うため、デレクは重要証人を探し出す。しかし、その証人もまたストリートギャングに...
小説

死日記 桂望実

著者のデビュー作  「県庁の星」「嫌な女」が映画化【中古】 死日記 小学館文庫/桂望実【著】価格:220円(税込、送料別) (2025/6/16時点) 楽天で購入 始まりは平凡な日常だった。。。 切なさを増していく中盤、そして号泣必至のラス...
小説

博士と狂人 サイモン・ウィンチェスター

言語学界の知られざる天才たちに捧げるノンフィクション。世界最高の辞書「オックスフォード英語大辞典(OED)」の誕生を描く本作は、前半こそテンポが悪く読みにくいが、中盤以降は一気に引き込まれる。物語の中心は、対照的な二人の男。貧しい家に生まれ...
小説

イッツ・オンリー・トーク 絲山秋子

会話文が中心で、まるで「ムダ話」のようにあっという間に読める中篇2作。いずれも女性が主人公で、再生をテーマにしている。読みやすさの中に味わい深さがあり、解説をただの書店員が担当している点も興味深い。著者は第134回芥川賞受賞の逸材「イッツ・...
アニメ

ブレイブ・ストーリー 宮部みゆき

子供から大人まで楽しめるファンタジー 全3巻(上・中・下)主人公の亘(わたる)は、現実と幻界(ヴィジョン)の2つの世界で生きる事を学び、成長していく。上・中・下巻のかなり厚めの3冊だが、それでも読み足りないほど、物語に引き込まれていく。 小...
小説

紀文大尽舞 米村圭伍

時代考証不要の、気軽に楽しめるミステリ風時代劇。推理というより、主人公が首を突っ込んでいるうちに物事が転がり、結果として真相にたどり着くタイプの物語。語り手の証言が多く、それぞれの語り口が興味深く魅力的。主人公は、江戸の湯屋の娘で戯作者志望...
小説

天使はモップを持って 近藤史恵

全八話の軽やかな謎解きミステリ。テンポの良い文体で、すっと読めて読後はすっきり爽快。主人公のキリコは、小麦色の肌に赤茶の髪、耳にはピアスがいくつも揺れる十代の女の子。お洒落で快活、会社の清掃員として働きつつ、新入社員の梶本大介を「おじさん」...
小説

時計を忘れて森へいこう 光原百合

本書は三編からなる、心温まるほのぼのミステリーだ。このジャンルにおいて、かつてないほど優しい読後感に包まれ、心からお勧めできる一冊である。高校生の翠は、なくした時計を探して森をさまよううち、誠実で心優しい青年、護と出会う。森の木々と対話し、...
小説

隠し部屋を査察して エリック・マコーマック

著者エリック・マコーマックのデビュー作「隠し部屋を考察して」を含む全20編の短編集。全体で330ページほどと手頃なボリュームながら、ショートショートや幻想譚、グロテスクでブラックな物語がぎっしりと詰まっている。どこか惹かれる作品もある一方で...
小説

超人計画 滝本竜彦

本書は、著者・滝本竜彦氏の心の内側を舞台にした私小説だ。自己と向き合わず、ひたすら自己肯定と弁解を繰り返す姿は、弱さと暗さを感じさせる。その生き方を否定はしないが、肯定することも難しい。脳天気な私にとっては理解しがたい作品と言えるだろう。夢...
小説

フェルマーの最終定理 サイモン・シン

数学史を駆け抜ける「フェルマーの最終定理」BBC制作のドキュメンタリー「ホライズン」関係者が手掛けた本書は、ピタゴラスからフェルマー、そしてアンドリュー・ワイルズへと続く「フェルマーの最終定理」証明の道のりを描く数学ノンフィクションだ。数学...
小説

ジゴロ 中山可穂

表題作を含む五編からなる連作短編集。主人公はレズビアンのストリートミュージシャン・カイ。冒頭から濃密な濡れ場が展開され、通勤時に読むには少々刺激が強い。まさに「女性の花園」を覗き見るような内容だ。新宿二丁目界隈で知られた存在のカイを軸に、夫...
小説

非・バランス 魚住直子

危ういバランスの上に成り立つこころ。大人でも子供でも、ほんの些細なきっかけで崩れてしまう。傷ついた二つの心が出会い、同情なのか友情なのか、わからないままに少しずつ氷が溶けていく。さらりと読める文体ながら、じんわりと心に残る一作。「タスケテ」...
小説

さよなら、スナフキン 山崎マキコ

小説というより連載コラムのような軽快な文体で、テンポよく読み進められる作品。主人公の心理描写も丁寧に描かれ、非常に分かりやすい。著者自身の体験が投影されていると感じさせる自伝的要素も魅力の一つ。“人から必要にされたい。ただそれだけだ。”とい...
小説

龍時03-04 野沢尚

全3巻 01-02 02-03 03-04フィクションながら実在の人物も多数登場する「龍時」シリーズ。その第三作目となる本作は、著者の遺作となってしまった。スペインでのシーズンを終えた志野リュウジは、一時帰国の直前、アテネ五輪本大会前の合宿...