小説 権現の踊り子 第123回芥川賞作家による初の短編集。川端康成賞を受賞した表題作を含む全6編が収録されており、240ページ弱の薄さで気軽に読める。文体は作品ごとに変化し、関西弁も多用されるため、好みは分かれるかもしれない。純文学でありながら、ふと笑ってしま... 2025.06.15 小説
小説 魔岩伝説 荒山徹 傑作であり、痛快な時代伝奇小説。日本と朝鮮を舞台に、歴史の衣をまとった冒険譚が展開される。徳川二百年の泰平の世、五十年前に死亡したはずの対馬藩士・鈴木伝蔵を名乗る男の登場を機に、物語は動き出す。朝鮮通信使という奇妙な制度を軸に、陰謀と謎が複... 2025.06.15 小説
小説 ワイルド・ソウル(上下) 移民政策を軸に、戦後日本の棄民政策を背景とした復讐劇。サンパウロ丸で南米アマゾンへ渡った衛藤と家族の数奇な運命を描く。前半は重苦しい展開ながらも、中盤から主人公たちの動きにテンポが出て一気に引き込まれる。構成の巧みさが光り、最後まで読ませる... 2025.06.15 小説
洋画 イノセント ハーラン・コーベン Harlan Coben(著)上下巻構成ながら、会話主体でテンポがよく、意外にも軽快に読める作品。アンソニー賞、シェイマス賞、エドガー賞というミステリ界の三冠を制した作家による、読者支持の高い一冊である。主人公マット・ハンターは、大学時代に... 2025.06.15 小説洋画
洋画 地球の静止する日 (創元SF文庫) SF映画原作の短編集であり、著者はいずれも超有名。 巨匠たちによるアンソロジー収録作は「閑かなる棲息」「主観の相違」「生命の定義」「理性有る蛮勇」「主従の逆転」「悲惨な結末」と、多彩なテーマが並ぶ。単なる娯楽作品と侮るなかれ。各作品には啓示... 2025.06.15 小説洋画
小説 わたしたちが孤児だったころ カズオ・イシグロ (著) 2017年 ノーベル文学賞 受賞 カズオ・イシグロ(石黒一雄)キーワードは「記憶」主人公の語りのみで構成された探偵物語は、起伏に乏しいようでいて、不思議と心に残る。時間軸は一定ではなく、記憶の中をたゆたうように物語が進行する。日本とイギリス... 2025.06.15 小説
小説 青空の卵 ひきこもり探偵シリーズ 坂木司 明るくもない、痛快でもない、難事件が起こるわけでもない。にもかかわらず、驚くほど面白く、心を引き込まれる異色のミステリ本作は、日常に潜む些細な謎を解く、等身大の物語。まるで自分の友人が隣で謎解きをしているかのような親しみやすさがある。主人公... 2025.06.15 小説
小説 ジャンヌ・ダルクまたはロメ ヨーロッパを舞台にした歴史短編集。史実を巧みに織り込みながらも、全体としては軽く流れてしまい、深く印象に残る作品は少ない。登場人物の感情描写がやや浅く、物語にのめり込むには物足りなさを感じる。全七編から成り、「ジャンヌ・ダルクまたはロメ」で... 2025.06.15 小説
小説 いらっしゃいませ 夏石鈴子 素直で一生懸命なヒロインが、不本意ながら始めた仕事に真正面から向き合い、少しずつ成長していく様子を描いた、軽やかなオフィス小説。文体は平易ながらテンポが良く、共感を誘う描写が多いため、スラスラと読み進められる。主人公・鈴木みのりは、本来の志... 2025.06.15 小説
小説 リアルワールド 桐野夏生 桐野夏生 『黒い作品』巧緻な心理描写と、現実からほんの少しずれたような高校生たちの感性。桐野夏生ならではの「若さ」の危うさが全編に漂う一冊。物語は、高校三年の夏、隣家に住むK高校の秀才・ミミズが母親を撲殺し逃走するという衝撃の事件から始ま... 2025.06.15 小説
小説 小春日和 野中柊 ふわりと優しい風が吹き抜けるような、ほのぼのとした回想録仕立ての物語。三月生まれの双子の姉妹・小春と日和が、逗子の祖母宅で過ごす日々。父の名付けたその柔らかな名前の通り、穏やかな日常がゆるやかに描かれていく。映画好きの母の影響で始めたタップ... 2025.06.15 小説
小説 レイクサイド 東野圭吾 著者はやや遅咲きながら、第134回直木賞を受賞。本作は登場人物も少なく、心理描写も控えめ。謎解き要素はほどほどに、一気に読める中編サスペンスだ。結末がハッピーエンドかバッドエンドか、読み手によって受け止め方が分かれる。私は哀しみを感じたが、... 2025.06.15 小説
小説 シブミ トレヴェニアン 面白い、完全に参った。既に故人となった著者は、出版に無頓着で偏屈だったが、確かに“天才”と呼ばれるにふさわしい存在だった。翻訳も極めて巧みで、訳者の力も本書の魅力に大きく貢献している。物語は二つの時間軸で進む。現代と、太平洋戦争前後。ミュン... 2025.06.15 小説
小説 ファニーマネー ジェイムズ ・スウェイン シリーズ第二作となる本作は、カジノを舞台にしたミステリ。著者はカードマジックとギャンブルに精通しており、場の空気感や描写にはリアリティと臨場感が漂う。スピード感はやや抑えめだが、緻密な謎解きと渋い主人公の魅力で読ませる一冊だ。主人公は、カジ... 2025.06.15 小説
小説 繋がれた明日 真保裕一 殺人犯の心理に切り込み、社会の冷たさと人間の尊厳を描いた、重厚なテーマの社会派小説。129回直木賞候補作。冒頭の一文が心に深く刺さり、読後感は驚くほど清く、気高い。単に「暗い」と切り捨てるには、あまりにも誠実で強い物語だ。未成年の中道隆太は... 2025.06.15 小説
小説 陽気なギャングが地球を回す 伊坂幸太郎 『陽気なギャングが地球を回す』『陽気なギャングの日常と襲撃』『陽気なギャングは三つ数えろ』3部作? 第一弾目ありそうでなさそうな、脳天気ギャングによる痛快アクション小説。ひねりは少ないが、とにかくテンポが良く、あっという間に読了してしまう。... 2025.06.15 小説
小説 生きいそぎ 志水辰夫 人生の終幕に立つ人々の姿を描いた、全八編の短編集。巧みな筆致で読ませるが、どこか胸に重くのしかかるような読後感が残る。生きることには哀しみが宿るのか、老いとは希望すらも奪うものなのか――白秋ではなく、まさに玄冬の物語だ。「人形の家」では定年... 2025.06.15 小説
小説 噂 荻原浩 “サイコ”というよりは、王道のサスペンス。軽妙な筆致でテンポよく読ませるが、ラストの展開には好みが分かれるところ。一気読みした末の、あの最後の2ページを絶賛する声もあるが、蛇足かな?物語は「デンジャラスなレインマン」による連続猟奇事件から始... 2025.06.15 小説